お寺からのメッセージ

2022

3弥生

March

「阿遮一睨すれば業壽ノ風定まり、多隷三喝すれば無明の波涸れぬ」

不動明王が右の一眼をもって睨めば煩悩の業たる輪廻の風が静まり、降三世明王が三度吽字を誦すれば無明の波は自然と涸れるのである。

剣を手にし、怒りの表情の不動明王さま。怖いお姿ですが、実は慈悲の仏さまです。こんなたとえ話があります。

あるとき、お母さんと子どもが船に乗って大海原に漕ぎ出します。そこへ嵐がやってきて、強い風が吹き荒れ、高い波が押し寄せてきます。お母さんは子どもが海に落ちないように必死で抱きかかえますが、手が滑ってしまい、子供は暗い海へ落ちてしまいます。

そのとき、お母さんはどのような表情をするでしょうか。

恐らく必死の形相で、何とか我が子を助けたいと海に手を伸ばすのではないでしょうか。その顔がまさにお不動さまの顔というわけです。今まで怖い顔と思っていたのに、不思議と優しいお母様に見えてきませんか。

自分自身はどうなっても構わない。何とか私たちを助けたい。

そんなお不動さまの一睨み、私たちを取り巻く悪いものを必ず打ち払ってくださいます。その慈悲に今、心を委ねたいものです。

 

長野 郷福寺 白馬秀孝