お寺からのメッセージ

2019

6水無月

June

「図に乗る」

「図に乗る」という言葉がございます。「図」とは、仏教の法要などで僧侶が唱える声明のことで、うまく転調できることを図に乗るといいました。そこから、「うまくいく、勢いよく物事が運ぶ」という意味が生まれ、さらには「調子に乗ってつけあがる」というネガティブな意味が定着してしまいました。声明の転調は難しく、日々の研鑽があってこそ図に乗ることが出来るのですが、なかなかそこには、目は向けられないようです。

それは、仏様を拝むことにも通じます。都合の良い時だけ仏様に頼るのは、それこそ調子のいいことです。日頃よりお寺や仏壇の仏様に手を合わせて拝むことによって、心も穏やかになりすくわれることも多いでしょう。またその姿をお子さんやお孫さんが見れば、仏様の御教えが伝わり、家庭円満になることでしょう。

習慣で行われる様々な行動の結果、身についた趣味嗜好を、仏教用語で「習気(じっけ)」といいます。それに、やりなれているという意味の「仕付く」が合わさってできた言葉が「躾(しつけ)」だそうです。身を美しくすると書いて躾ですが、心の美しさも磨かれるはずです。そうすれば、善い意味で家庭も図に乗ることが出来るのではないでしょうか。

南無大師遍照金剛

福島 鬚坊主