2019 年
9月 長月
September
「即身成仏」
真言宗の教えの中で、他の仏教諸宗との一番の違いは「即身成仏」という考え方である。
心の救済は来世にあるとするこれまでの仏教では、仏になるためには途方もなく長い時間がかかるとされていた。これを「三劫成仏ーさんごうじょうぶつ」という。これに対し真言宗では、人間は生きながらにして仏になることが可能で、機縁が熟せば誰もがすぐに成仏できるとされている。これを「即身成仏」という。この「即身成仏」の思想を明確に打ち出したのが、819(弘仁10)年に弘法大師が著された「即身成仏義」である。
内容は「宇宙を構成しているのは六つの要素「六大」で、それを現すのは四つの曼荼羅(四曼)であり、三つの行動(三密)によってすべてを包括する大日如来と一体化できる」とある。
「六大」とは、地・水・火・風・空という物質を表し、精神を表す識、の六つをいう。これらは、宇宙を構成している要素であり、すべてのものの本質である。また本尊大日如来の象徴であり目に見えないものとされている。
四つの曼荼羅(四曼)は仏像や法具、梵字などにより六大の世界を具体的に表現している。
そして三つの実践行動が「三密」である。
手で印を結んで宇宙の動きを表す(身密)真言を唱える(口密)心に宇宙を感じる(意密)である。この「三密」で宇宙すなわち大日如来と一体化するのである。
「即身成仏」を目指すには、これらの理論の把握と行動の実践が必要不可欠で、仏を自分の心に感じ、成仏すべく修行(生活)することが必要であると弘法大師は説かれたのである。
埼玉 阿弥陀寺 大幡密範