お寺からのメッセージ

2020

11霜月

November

「体同用異」

最近、趣味で仏像彫刻を始められた檀家さんから、お寺に自作の仏像を一体奉納したいとお話がありました。

何でも観音様を彫られたとのこと。どんなお姿の仏様か楽しみにしていたところ、なんとそのお顔は観音様に全く似ていないのでした。しかし確かに蓮華を持ち、与願の印を示されています。そして何より、そのお顔がとても優しいのです。この時私は、観音様の表面的な価値だけに囚われていることに気づかされました。

お大師様は『吽字義』の中で「水外に波無し。諸法の本源を観ぜざるが故に、妄に生ありと見る」と説かれています。

大小様々な波も、水を離れて成り立つわけではありません。その本源は皆同じ水であり、大きな海の一部なのです。そして大きさや形の異なる波がその働きとして顕現しているだけなのです。この全体性を観ないところに迷いや苦しみが生まれてくるのではないでしょうか。

自在にそのお姿を変え、あらゆる方便を用いて苦しむ人々を救って下さる観音様。本堂に奉安された観音様もお姿が異なるからこそ、様々な働きで私達を導いて下さるのではないでしょうか。

 

宝生寺 堀江泰弘