お寺からのメッセージ

2025

9長月

September

「珠を持てば善念生じ剣を把れば殺心の器」(宗秘諭)

数珠のような清らかなものを持てば善い心が生じ、剣のような凶器を持てば殺意が生じるというお大師さまのお言葉です。これは人間が環境によって、善念と殺心のどちらも持ち得るということも意味しています。

令和七年は第二次世界大戦終結から八十年という節目の年となります。世界へ爆煙銃火をもたらした第二次世界大戦は、人類史に於いて比類なき兵厄となりました。その犠牲者は五千万人から八千万人と言われております。この戦史を省みて、後代である我々現代人が成すべきことは、恒久平和の希求と実現、唯々これにつきます。

しかしながら、現実には世界から戦争は消えることは無く、無情なる戦火は悲しみを積み重ねております。国勢や世情など大きな河流の中に在ると、人間はひとりひとりその流れに対する反応を求められます。環境から剣を握ることを強いられたとしても、殺心の器ならざる道を我々は常に模索し続けなければなりません。

世界各地にて憎しみ殺めあう人々が少しずつ剣を捨て、善心を以て手を取り合う未来を、我々は念珠を携え仏前に記念するばかりであります。

 

神奈川 大聖院 鷲雄春成