お寺からのメッセージ

2024

6水無月

June

「時として暫くも忘るることなし」

「初心忘るべからず」といいますが、「初心」とは、もともと仏教語です。「初発心」、つまり、初めて仏の道に志を起こすことと同じ意味になります。

菩薩は、いかに如来になることを目指して、修行を続けています。その菩薩が、修行の初めに起こした「仏に成ろう」という志が、「菩提心」です。お大師様は、この菩提心には信心、慈悲、智慧、瞑想が含まれているとしています。

そして、慈悲、智慧、瞑想は、修行中の菩薩だけではなく、悟りを開いた仏も、自らの戒めとして一時も忘れることがない、と仰っておられます。

「菩提心」とは、自分本位・自己中心ではいけません。一つの松明から何千もの火をとっても、松明はそのままであるように、幸せはいくら人に与えても減ることはない、とお釈迦様は仰っております。この教えこそ、お大師様がおっしゃる菩提心に含まれる慈悲だと思います。

「初心忘れるべからず」。志の実現には、最初に立てた志を、絶え間なくはぐくみ、実践し続けることが大切なのです。

 

東京 萬徳院 大野 真弘