お寺からのメッセージ

2024

6水無月

June

「四生(万物)の盲者は盲なることを識らず」

「恩」という言葉を最近聞いた方はいるでしょうか。昔に比べると減った気がします。

「恩」は仏教では「大乗本生心地観経」という経典に「四恩」という言葉で説かれています。四恩とは「父母の恩」「衆生の恩」「国王の恩」「三宝の恩」四つの恩のことで、父母の恩とはお腹に命が宿ってから、産み育てるまでに受けた多大な恩。衆生の恩は生活のための衣食住に関わるすべての人たちからの恩。国王の恩は王様という事ではなく、国際社会の平和のために努力している人たちへの恩。三宝の恩とは仏様とその教えへの恩。

買い物一つとっても、今はスマホの画面をタッチすれば物が届き、それが届くまでに携わった人の顔すら知ることは無くなり、昔では有難かったことが当たり前になった気になってしまい、「恩」に気づきにくい世の中になったように思えます。

お大師様が「四生(万物)の盲者は盲なることを識らず」と言われたように、大小の恩を感じることができず、すべての者への恩を忘れ、私欲(小欲)に走りがちな人類に本当の意味での幸せ(大欲)は待っているのでしょうか。

 

栃木 金乘院 長濱大清