お寺からのメッセージ

2024

4卯月

April

「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」

これはお大師様が秘蔵法鑰に残された一文です。人間はだれしも暗闇の中から生まれてきて、死ぬときには暗闇にかえっていく。なぜ、人は生まれて死ぬのか。それは誰にも分らないという意味です。生とは何なのか。死とは何なのかという疑問を投げかけられているかのような気もします。人の生き死にとは誠に摩訶不思議であり、神秘的でもあるが、とても身近なことでもあります。

以前、ある葬儀に立ち会いましたところ参列者の中に小さな女の子がおりました。お母さんがその子を抱えて「最後に顔を見てあげて」と言い、棺に近づけたところ「いやだ!こわい!!」と言って見ようとしませんでした。周囲の人はただ女の子が駄々をこねているだけのように見ておりましたが、恐らく女の子は本能的に恐怖と言いましょうか畏怖の念ともうしましょうか、そのようなものであったのではないでしょうか。死は簡単なものではありません。怖いものです。嫌なものです。だからこそ命を大切にし、他者のいのちを大切にするのです。

皆様も「命は大事だよ」と聞いたことがあったでしょうが、我々人間というのは忘れてしまう生き物です。なので、今一度自らの命。周りのいのちというものを再度見つめなおしていただけますと、そこに新たな気づきがあるかもしれません。もし気づきがあったとすれば、それはご先祖様、仏様、お大師様が気づかせてくれたように思えます。

南無大師遍照金剛

 

相模 西善院 小林隆全